世帯分離の手続きの妨げになることのひとつが「生計が一」という言葉です
「生計が一」という言葉を持ち出して、世帯分離はできないと申請を受け付けない自治体もあるようです
実際に相談を受けた事例では、役所の職員が家にまで来たというケースもあります
ひとつ屋根の下で暮らしているのに、世帯を分けることは許せないというような職員もいるようです
家のことを確認するのは、「生計が別」として相応しいつくりになっているかの確認のためだと思いますが、これについても 法律上で明確に決められていることではありません
2世帯住宅は一般化していますし、玄関や台所の数などは、そもそも世帯分離に関係のないことです
そして、もっとも肝心なのが「お金」の管理のことで、「生計が一」というと、まず、お金のことを考えるかもしれません
しかし、これについても明確な決まりはありません
そもそも、1ヶ月いくらあれば生活できるでしょうか…?
日々の生活費の中で、例えば食費を例にすると、毎月食費をいくら使っていますか?
2万円で十分と言う人もいれば、10万円でも足らないと言う人もいるでしょう
平均値を求めることはできても、その人の収入、体質、体型など、その人それぞれに必要な価値判断があります
生活費に明確な基準がない以上、この金額までが、「生計が一」か「別」かの判断の分かれ目などというものはありません
一般的なことや一般論などは、まったく意味がないことです
もしも、お金のことが、世帯分離できる、できないの判断に影響するのだとしたら、その金額と根拠を明確にしておく必要があります
例えば、家族の中に、毎月の収入が3万円という人がいるとします
おそらく多くの方は自立できているとは思わないでしょう
毎月の収入が3万円で生活できていると言っても、家族と同居しているからであって、ひとりの生活としては成り立たないと考えられそうです
しかし、現実には、毎月の収入が3万円でも生活している人はいます
問題のひとつは「3万円」という金額に対する価値観の違いで、人によって判断が分かれてしまうという現実があります
また、今はたまたま「3万円」であって、来月は増えるかもしれないし、そのつもりでいるという場合もあります
一時的なことかもしれないし、一時的なことをどう解釈するか、期間的な定義もまったくありません
どこをどうやって線引きするのかは役所が決めることですが、同時に、判断の理由、根拠を示すのも役所側のすることです